ながらく放置していましたが、家庭内のネットワーク環境を向上させる作戦の最終回をようやく書いてみることにしました。
自分に対するメモの意味もあります。
そもそも、住んでいるマンションの建物内の回線がメタル回線でドコモ光のFTTHなのに全然早くなくて、家族みんながWeb会議やったりすると少し心配な状況になる、ということがあり、ずーっと、環境を良くするための努力をしてきました。
その結果、このネットワーク環境向上作戦の1と2でネットの速度改善は果たされました。
docomo利用者なのでドコモ光から離れるのは残念でしたが、マンション建物内の回線を光ファイバーに変更するのは無理だとの回答があったため、その点問題ないと回答のあったNURO 光 for マンションを導入したのでした。
で、欲が出て、さらに家の中でファイルサーバなんかとして使っている部分とか、もう少し早くできないものかと考えて、3、4、5ときたところでした。
つまり、デスクトップPCに2.5G対応LANカードを追加し、LANケーブルもマルチギガビット対応のものに変更し、2.5G対応のスイッチングハブを導入し、少なくともネットワーク速度以外で足を引っ張ることがないよう、NASを基本性能が少し高いものに変更するところまでをやったところでした。
あわせて、Planex 有線LANアダプタ USB-LAN2500Rも購入しておいたのでした。
さて、最後に、ギガビット止まりになっているNASのLAN部分に対して、購入したLANアダプタを使うことで速度アップを図る、というのが最終的な作戦内容でした。
けっこう大変な部分もありましたので、以下で、備忘的な意味も含め、ご紹介したいと思います。
全体の経緯は上に書いたとおりですが、具体的にNASを選定する際からいろいろと苦悩がありましたので、その辺りの経緯も紹介します。
考えてみれば、最近のNASは普通にマルチギガビット対応のものも出てきていますし、後からマルチギガビット対応のLANカードを追加できるタイプのものもあるようです。
とは言っても、4ベイとかえらいごっつい仕様のものが大半になっていて、まあ当たり前ですが、ご自宅でビジネスされているご家庭とか中小企業の方とか、そういった方々を主なターゲットにしたものになっているようで、一般の家庭で使うにはトゥーマッチなものになっています。
もちろん、価格も高めです。
で、いろいろ調べてみたところ、QNAPの一般コンシューマ向けの製品で、あるじゃないですか、マルチギガビット対応できている製品が。
私自身は、長らくSynology製品を使っていて、一般のコンシューマ製品では、国内のバッファローとかIOデータ以外のキット系のNAS製品は、Synologyの他に、QNAPが有名かと思いますが、たまたまこれまで縁がない状態でした。
特定の環境に依存してしまうようになるのは好きではないですが、こればかりはどうしようもなく、Synologyの中で作っている音楽ファイルサーバの機能や、その他もろもろ、再構築するのはなかなか大変な作業になります。
それにしても、2.5GbEにデフォルトで対応している製品というのは、惹かれました。散々悩んで、結論としては、Synologyのままでいこう、ということになりました。
とは言え、2.5GbE対応でスピードアップできる魅力は捨てがたく、なかなか捨てきることができずにいる中、いろいろ調べた結果、これはいけるかも、という策が見つかり、それで進めてみることにしました。
それが、Synologyがやめてしまった、USB接続のLANアダプタを使って、2.5GbE対応する、という作です。
もちろん、Synologyがやめてしまったには訳があるのでしょうが、成功事例をいくつか見かけるので、おそらく行けるのではないか、と踏みました。
Synology NASのLinuxベースのOSであるDiskStation Managerに、最も使われているRealtek社の2.5GbE対応チップを使ったUSB-LAN2500Rなどに対応するドライバを強引にインストールする、という力任せの作戦です。
実は、この作戦を知ってまもなく、その時点で所有していた、Synologyの最も一般的なコンシューマ製品であるDS218jで試してみたのでした、ドライバのインストールを。
インストールはできたように見える(インストール自体がかなりの難しさ)のですが、 USB接続の LANアダプタが認識されないので、DS218jでは断念しました。
想像したのは、Synology NASの背面のUSBポートはそういう柔軟性を持たせないように、あえて作ってあるのでは、ということです。
成功した事例を書かれているブログなどで使われているのは、結構お高めの重量級のコンシューマ製品またはビジネス用である4コアCPU搭載4ベイモデルのDS920+あたりになっています。
そして、これらはすべて、背面だけではなく前面にもUSBポートが用意されています。
私自身は4ベイレベルの製品を使うニーズはないと考えていますので、並べてみてみると、候補はDS720+になるわけです。
調べてみても、この製品 USB接続の LANアダプタの導入に触れている記事はないので、多少は賭けの部分はあると認識していましたが、なんとなくうまくいく気がしていたのと、どちらにしても、DS2xxjシリーズよりは基本性能がかなり高いので満足できるところもあるだろうと考えました。
で、結局、Synology NAS DS720+とPlanex USB-LAN2500Rを導入することにしたのでした。
これら2つのことを紹介したページは上にリンクを張ったとおりです。
以下で、DS720+に力ずくでUSB接続のLANアダプタであるUSB-LAN2500Rのドライバをインストールして、USB-LAN2500Rを動作させて、PCとDS720+を間にスイッチングハブ挟んで2.5GbEで接続させるところまでをご紹介しようと思います。
できるだけ、誰でもできるように、と思っていますが、環境はそれぞれ異なっていたりしますし、スキルレベルの違いますし、不足やわかりにくい部分があったりするかもしれません。
なにより、これは自己責任でやっていただくようにお願いします。
私の方からは一切の補償やサポートなどはいたしかねますのでよろしくお願いします。
有志の方が作られたGitHubのページにアクセスして、手元のLANアダプタやSynologyのNAS製品、およびDiskStation Manager (DSM)が対応しているものであるかを確認し、必要な場合は対応製品を入手する
GitHubというのは、プロ向けの世界で恐ろしげな感じがしますので、あまり考えずに関係あるところだけ読んで理解しちゃいましょう。
https://github.com/bb-qq/r8152
ここにbb-qqという方が作られた「DSM driver for realtek RTL8152/RTL8153/RTL8156 based USB Ethernet adapters」のページがあります。
こちらに、対応するRealtek社のチップを使っているLANアダプタ、および、対応するSynology社のNASがリストアップされていますので、確認しましょう。
「Supported RTL8156(2.5Gbps) based devices」という記述の下に対応するLANアダプタ製品が列挙されていますので、手元のアダプタがこれらに該当するか確認し、そうでない場合は、安全を取るなら、入手しておきましょう。
この記事を書いている時点(2021.12.5)の リストは以下のとおりです。
ASUSTOR AS-U2.5G (Type-C, confirmed working)
Plannex USB-LAN2500R (Type-A, confirmed working, Japan only)
Buffalo LUA-U3-A2G (Type-A, confirmed working, Japan only)
CLUB 3D CAC-1420 (Type-A, confirmed working)
TUC-ET2G (Type-C, confirmed working)
CableCreation B07VNFLTLD (Type-A, confirmed working)
UGREEN USB C to 2.5G Ethernet Adapter (Type-C, confirmed working)
biaze KZ13 (Type-A, confirmed working)
それから、SynologyのNASの方ですが、使われているCPU等に合わせてドライバが作られているので、このページの中でも書かれている通り、どのCPUが搭載されているかをこのページで確認しましょう。
このページの表の中で「Package Arch」と書かれている欄が、ダウンロードすべきドライバを識別するための名称のようです。
それから、よく読むと、中に「NOTE: I recommend using front ports to connect devices because some users reported stability issues when they use rear ports.」とフロントポートを使うことを推奨する旨がはっきり書かれていますね。
ここまで準備です。
有志の方が作られたGitHubのページにアクセスして、SynologyのNAS製品ごとに対応するドライバを入手する
STEP.1で確認した結果を受けて、ドライバのダウンロードページに飛んで、Synology NASのCPU等に合わせたドライバ別のページで対応するドライバをダウンロードページしましょう。
ドライバのダウンロードページはこちらです。
この記事を書いている時点(2021.12.5)のドライバの最新版のバージョン: 2.15.0.4
対応するドライバをの種類:
r8152-alpine-2.15.0-4.spk
r8152-alpine4k-2.15.0-4.spk
r8152-apollolake-2.15.0-4.spk
r8152-armada38x-2.15.0-4.spk
r8152-armadaxp-2.15.0-4.spk
r8152-avoton-2.15.0-4.spk
r8152-braswell-2.15.0-4.spk
r8152-broadwell-2.15.0-4.spk
r8152-bromolow-2.15.0-4.spk
r8152-cedarview-2.15.0-4.spk
r8152-denverton-2.15.0-4.spk
r8152-evansport-2.15.0-4.spk
r8152-geminilake-2.15.0-4.spk
r8152-monaco-2.15.0-4.spk
r8152-rtd1296_for_2GB_RAM-2.15.0-4.spk
r8152-v1000-2.15.0-4.spk
となっています。
STEP.1で確認したCPU等の種類の「Package Arch」の欄の記述が上のリストの名前の中に入っているはずですので、その対応するドライバをダウンロードしましょう。
適当なフォルダに保存すればOKです。
GitHubで入手したドライバをインストールする
NASにドライバをインストールします。
これはそんなに難しいところじゃないと思います。
DSMにアクセスして、「パッケージセンター」を立ち上げます。
右上にある「手動インストール」をクリックします。
それから、「参照」をクリックして、先程ダウンロードしたドライバファイル(拡張子.spkのファイル)を選んでインストールします。
DSMが6台の状態で、適切なドライバファイルを選んでインストールしていれば、すぐに成功して下の画面のとおりになるはずです。
残念ながらうまく行かない場合は、STEP.1からよく見てみて、確認してみてください。
そして、DSMのバージョンが7以上の場合は、初回は必ず失敗するそうなので、そこからさらに手順が必要になります。
SSHを使ってコマンドを打つ必要があり、ここはちょっとハードルが上がります。
NASのDSMが7以上の場合、初回のドライバインストールは失敗したようになるので、SSHターミナルでNASに接続して、コマンドを実行してインストールを完了させる(DSM6の場合は不要)
WindowsのPCからアクセスしている前提でご紹介します。
私の場合はWindows 11になっているので、Windows 10の方には少し異なった見え方になっているかもしれませんが、概ね似ているので参考にしてみてください。
ます最初に、Windows側の準備です。
歯車マークの「設定」の中の「アプリ」メニューから「オプション機能」を立ち上げましょう。
これは、Windowsの機能のオプションになっているものを追加インストールしたり、不要なものをアンインストールしたりするメニューです。
Windowsが提供可能な機能全てがいきなりインストールされているわけではなく、万人が必要ということはないようなオプション機能については、自分で選択してインストールしたり、削除したりする必要があります。
SSHという、サーバー端末にネットワーク越しに接続する機能を提供するオプション機能もその1つで、今回は、Windows側がクライアントで、NASのほうがホスト側になりますので、OpenSSH クライアントというオプションを追加インストールします。
インストールに成功すると、上のようになります。
Windowsの側は一旦ここまでで、続いて、Synology NAS側の準備です。
「コントロールパネル」を立ち上げて、「端末とSNMP」というメニューを選択します。
開いた画面上、通常はオフになっている「SSHサービスを有効化する。」というところのチェックボックスにチェックを入れてオンにして、右下の「適用」をクリックします。
日常的にSSHアクセスを可能にするのであれば、ポートと言うところの数字(ポート番号)はデフォルトの22ではなく、異なる番号にすることが推奨されると思いますが、今回はこの一瞬だけですので、良しとして、このまま行きます。
ポートとはなにか、ということが知りたい方は、別途調べてみてください。
これで、クライアントであるWindowsの側とホストであるSynology NASの側の準備ができました。
いよいよコマンドを打つことになります。
コマンドプロンプトかPowerShellかを立ち上げましょう。
コマンドプロンプトもPowerShellもここでは同じようなもので、文字でコマンドが打てるようになっているアプリです。新しいWindowが立ち上がってくるものです。
Windowsの検索機能で、好きな方どちらでも結構ですので、コマンドプロンプト、もしくは、PowerShellと検索して、どちらかの「アプリ」を立ち上げます。
通常なら黒いもしくは濃い青の画面に白文字のWindowです。
ここで、以下のコマンドを打って、まずはWindowsの側からホストであるSynology NASに接続します。
ssh user_name@xxx.xxx.xxx.xxx -pnn
ここで
user_name:Synology NASのAdministrator権限を持つユーザー名
xxx.xxx.xxx.xxx:Synology NASのIPアドレス
nn:先程設定したポート番号(デフォルトなら22)
として、タイプしてEnterします。
サンプル:ssh user_name@100.100.100.1 -p22
うまくいくと、
ssh user_name@100.100.100.1’s password:
というプロンプトになりますので、ここで
このユーザー名に設定されているパスワードをタイプしてEnterです。
うまくいくと、上の画面の最後の行の緑色の文字の部分である
user_name@xxxxx:~$
というプロンプトになります。
これで、無事接続ができた状態になりました。
ここからドライバのインストールを成功させるためのまじないで、以下の通りタイプしてEnterします。(上記のSTEP.1で紹介しているサイトに記載のとおりです。)
sudo install -m 4755 -o root -D /var/packages/r8152/target/r8152/spk_su /opt/sbin/spk_su
(これで1行です。途中のスペースなども間違えずにタイプしましょう。コピペが堅いですけど。)
私なんかには、これが何を意味してるのかはさっぱりわかりませんが、この際良いのです。
ここで再度パスワードを求めるプロンプトが表示されることがありますが、上と同じパスワードを入力してください。
一見何も起きてないような反応で不安になりますが、気にせずに、先に進みましょう。
ここまでくればしめたもの、ラストです。
このままSTEP.3を再度実行します。
ドライバファイルのインストールです。
今度はどういうわけか、うまくインストールできるはずです。
結果、この画面(再掲)になれば、インストールと稼働は完了です。
上で設定したSynology NAS側のSSHサービスの機能をもとに戻すことを忘れずに実行しておきましょう。
普段から利用されている方はもちろんそのままで結構ですが、今回このためだけに設定したのであれば、「SSHサービスを有効化する。」というところのチェックボックスのチェックを外して、「適用」をクリックして、SSHサービスを無効にしておきましょう。
前面のUSBポートにLANアダプタを接続して、NASを再起動する
ここまでくれば、もうあとは簡単、なはずです。
ドライバが準備できましたので、前面のUSBポートにLANアダプタを接続して、Synology NASを再起動しましょう。
この段階では、念の為、LANケーブルはまだ差し替えるのではなく、できれば、追加したほうが良いかもしれません。
私は差し替えちゃいましたが、すぐにうまく起動してドライバも動作して、LANアダプタが稼働しないと、NASとの接続を失ってしまう可能性があるので。
NASのDSMのコントロールパネルのネットワーク内のネットワークインターフェースにLAN3が追加されているので、自身の環境に合わせてLANの設定を行って動作確認する
無事再起動されたなら、Synology NASのDSMのコントロールパネルを立ち上げて、「ネットワーク」の中の「ネットワークインターフェース」を開きます。
LAN1とかLAN2というのが通常接続しているLANポートということだと思われます。
LAN3というのが今回前面パネル側のUSBポートにLANアダプタを接続することで新たに追加になったLANポートということになります。
ここで設定内容を開いて、ご自身、ご自宅のLAN環境に合わせて、適宜設定を変更して、ご自身のLAN環境に接続できるようにしましょう。
これで、完成のはずです。
新しいLANアダプタの方にLANケーブルを接続して、確かめてみてください。
無事、通信ができているようなら完成です。
お疲れさまでした。
我が家では、これら情報を色々と調べまくって対処したため、所々で失敗のような状態になったりしましたが、最終的にはここまで辿り着くことができました。
結構難しいところもあって挫折しそうな気持ちになったりもしましたが、なんとか辿り着くことができました。
で、結局早くなったのかどうなのか、という点ですが・・・
上の通りで、シーケンシャルアクセスではリード180MB/s以上、ライト140MB/s以上と、1Gbit以上のスピードが出ているようなので、少なくとも、通常の1.0GbE以上のスピードが出ているということだと思われます。
2.5GbEの環境なのに、とも思いますが、こればかりはその他の環境も影響しますので。
1.0GbEの時のこの記録をとっていなかった上に、これから取り直す元気もないのが横着というか、いい加減なところですが、動画ファイルなどの巨大サイズのファイルのコピーの際のスピードが体感的には全然違うと感じるくらい早いので、満足です。
今回は、NASとデスクトップPCとその間のハブを2.5GbE環境にグレードアップしましたが、できれば、家の中全体をもっと早い環境にしてあげたいとは思っています。
とは言え、所有端末は一部しかWi-Fi6対応していないですし、インターネットの速度も700~800Mbps程度ですし、いまのところはここまでできたことで十分だし、満足できるものになったと思っています。
そこそこのコストとも言えますし、まあまあ抑えた中でここまでできれば良しとしたい、という言い方もできるかなと。
さて、この状態になって、数ヶ月たっていますが、順調です。
とくにトラブルが発生したり、ということにもなっていません。
LANアダプタによっては、結構熱くなったりして大変、というコメントも見たりしますので、運用には注意が必要なのかもしれませんし、そもそも、このメーカーの意向を無視したかのような策は、まあ、ちょっと強引で、どこかで塞がれてしまう、ということがあるかもしれません。
そのうち、コンシューマ製品のNASにもマルチギガビット環境に対応した製品が多く出てくるようになるでしょうし、価格もこなれてくると期待できます。
PCの側もマザーボード側がマルチギガビットのLANのチップを積むのが普通になってくるでしょうし。
いや、もしかしたら、5GとWi-Fi規格の進化で、有線などという接続自体が時代遅れになって、どの端末もごく簡単に無線高速接続できるようになる時代も、すぐ近くまで来ているのかもしれないですね。
ネットワークのことに関しては、一筋縄ではいかないことが多くて、どこをどうやってもうまく行かなかったり、でも急にうまく行ったり、原因究明が困難だったり、ということがあって、いつも大変難しいものだと思っていますが、これも、もっと簡単に誰でも扱えるようになると良いと思っています。
ということで、今回は、備忘メモ的な内容も含むネットワーク環境の向上の面白い策のご紹介でした。